いのちの名前

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すごくいい日の終わりに死にたいって思ってしまった
試験が終わって陽が高くなる頃、神社で人を待っていたらいつのまにか6月になっていることを思い出した 緑が重たくなって空は青い、明るい空気を吸って喉が渇いた 季節が熱くなって、わたしに向かって手を振った彼の青の明度が上がっていた
それからいつものようにドライブをしながらどんどん街から外れ、音楽とアニメのはなしをし、気負わない食事をした 自然に囲まれるのは心地いい いつでもわたしは溶け込めるなーと思った 川に入って、裸足で地面に立つと、何も考えなくてよくなった 遠くを見て、虫の声、川の音、樹々の騒めきを聴き、視界が鋭くなって、途方もなく星の上に立っているような気がした 振り返ると君が一眼のシャッターを切っていて、世界がヒュンと自分のなかに戻ってきたとき わたしはここにいるのだと思った ここにいて、ここにしかいられない そういうふうに遠くから近くの世界を展望して諦めを癒していくやさしさを思った 農場の端でソフトクリームを食べながら、君は夢のなかで男の子だった だけどそれでもいっかって思ったよ、って言われてうれしかった
夕方はレインちゃんと会い、壁に寄りかかってビールを飲みながら恋とか人生のはなしをした 嘘みたいなことばかり現実になっていく ほんとうの幻想はそのままだけど なにかが始まって終わっていくときの、なにかを望みながら諦めるときの、あの痛くもなくつらくもなく寂しくもないが、心に青い高温の火が灯る感じの、凄惨な感じの気持ちのことを、「トーキョー」って感じがするんだよね。といった心持ちで頷き合った 時が来れば潔く別れ、帰ってから、もらった本がよくて泣いた 我に返ってあしたが月曜日であることがまたつらくなった 漫画を読み、漠然と人生のことを思い、またひとり人のことを思い出したけど、連絡は取らなかった
ママの弾くピアノの音が聴こえる夜 世界を肯定したいと思いました 立ちすくむときはいつも誰かのことを思い出して、指先に灯るiPhoneの液晶を愛おしく感じている