夏の終わり

 f:id:n_azel:20160821012008j:image

長い長い夏休みが終わる。遮光カーテンで区切られた外では唐突な土砂降り、エアコンの効いた暗くてつめたい部屋でアニメを見ることの幸せを痛いほど感じている。いつくもの物語を通り抜けて、それでも物語のなかに取り残されなくなったのは大人になった証拠なんだろうか。アニメの登場人物が吐く台詞にいちいちグッときては赤線を引き、そのままにする。じゃあその赤線を引いた行為って何なんだ、別に復習するわけじゃあるまいし。ここんとこ、こういうことが増えた。これは消費することとは少し違います、ガンガン身体に負荷をかけることでアップデートするみたいな、気付いたら強くなってましたみたいなアレか?違うな、ぜんぜん違う。オタクは安心したがるので、不安を掻き消すという行為がここでの正解であり、なにも考えたくない。けど体力もない、エネルギーも使いたくない、となればパソコンの前に猫背でいるしかない、という思考回路に導き出された回答です。仕事?恋愛?はっはー、次の人生ではうまくやるんです、だから今はいい、今はこれが最高なんです、邪魔しないでください。アニメから大事なことを教わり、人差し指をバキバキに割れた液晶で切った血で要所要所に赤線を引き、教訓を得るだけ得ては放置し、のうのうと生きてる朴念仁。自棄になるげんきもなくて最悪なんですよねー、と右に笑うが日曜日の鬱に打ち勝てないのでヒーローにはなれません。ここが現実だということをいまだに信じ切れていない。水難事故とか、放射能とか、諸々、様々なニュースを見かけ、あーなんでこれが自分ではないんだろうって無駄な可能性から妄想を広げ、例えばオリンピック選手オア死体オアダイ、そしたら最初の選択肢を選ばなくなったということも大人になった証拠です。多分。ババアになってもこうして厭世的な目でほんとうに猫背になった自分がアニメを見続けているんだろうかとか考えてわけわかんなくなって再生ボタンを押して思考停止、その繰り返し。朝と夜だけ街へ出て、休日はパソコンの前にいたら夏がもう終わる。浅い溜息を何度も吐き続けて、いつのまにか蝉が鳴き止んで、夜が冷える。またサンダルを買い忘れ、割れたiPhoneを替えそびれ、大きな決断もし損ねた。毎年夏を溜め込んで今年も取り残されるんだろうな。エヴァ見たし。