冬の蛹

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すごい悲しくなって泣いた。

大切な人が死んだこと。それでママとパパが喧嘩をすること。ずっと生活が続くこと。とまれないこと。みんなと見えているものが違うこと。それを表明できないこと。面倒で鵜呑みにしてしまう。閉じこもってしまう。ぜんぶ、違うのはわかっているはずなのに、抗えなくなる。

守るとはたたかうということです。たたかうのは、つらく、くるしいことです。なのに、戦争はいろんなものをもたらしてくれる。だから、想像力があるのでしょう、そのために虚構が、芸術が、文化が、歴史が、あったはずでしょう。たたかうのをやめてはいけない。やめたら死ぬ。それでも戦争はいけない、と思うのは、やっぱり悲しいからだけど、みんなにしあわせをくれるなら、じぶんのことなんてどうでもいい、わたしの上だけに爆弾が降り注げばいいと、ほんとうに心から思っています。

守るには強くなくちゃいけない。捨てるものなんてなにもないから、ぜんぶのがらんどうを抱えていきたい。羽を隠して、愛しい手付きで、知らないだれかの頬を撫でる。平然と出来てしまうね。ほんとうの願いは絶対に言わないくせに。震える手で、愛するひとにくべる花。いつだって重力に負けるから、眼鏡におちる涙を拭うことすら忘れてしまった。思い出させてほしい。童話で泣いたり、昔話の教訓をまっすぐに受けていたりした女の子。透明な血液は、あなたといっしょに蒸発してしまったのですね。星を見ることすらなくなりました。強くあらねばならないと、かわいい女の子は孵化することなく死にました。洋服に残ったあなたの匂い。洗濯機でなにもかも濾過されるから、分離してまた悲しい記憶すら消えてしまう。脳みそはいつも空洞。興味のない詩だって、3回読めばあたらしく覚えてしまう。もしあなたに災厄が降ってきたときは、冬眠するみたいに、目を閉じて、過ぎるのをじっと待てばいいよ。わたしは大丈夫。

眼前の景色なんて見ていない、わたしは眠ったように、溜息の出る記憶を反芻している。悲しいほうの溜息といっしょにわたしがなくから、そのぶんきみに、幸福な、うつくしい、透きとおった呼吸が生まれますように。