2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

谷底

渋谷へ行くことはよくあるけど、どれも俯向くような記憶でうまく思い出せない。藤原新也の『渋谷』がわたしの手段で、駅では常に岐路に立たされる。落ち窪んだ谷間に駅があり、坂の頂上の向こうには何があるかわからない。谷底ではいつもだれかを待っていて…

こわいおもい

凄惨、っていうよりもっとしずかな、真空みたいな世界。砂漠を歩く。鞄に入ったまま背中に張り付いたやり残しのタスクが気になって、それ以外にも山ほど理由はあるのだけれど、ぜんぶのわるいこと、それを嫌悪でぐるぐるに縛ってしまって、ほんとはもっとわ…

400回の未遂

なんだか寝付けず具合の悪い起床をしたものの、旧友と会う約束を取り付けたので互いの近況報告とこれからのことを延々と話した。よく笑い、よく食べたのに、午後になると死にたいきもちが急激に襲ってきて、日曜日の笑点からの時間を思い出していた。家に帰…

告白

なにもかも通り過ぎて使い果てて動かなくなった 想像して想像して想像して想像して行動に移さない わたしはぜんぜんがんばれないから ここ数年は好意に応えることをぱったりやめてしまっていたので、わたしはありがとうって言った、そしたらはっきり伝えてく…

雨の中の庭

初めて会った日もこんなふうに雨が降っていたと思う、書店の狭い通路、本にまみれてわたしたちはまた出会う。駅を出て、街の奥へと進んで、ジェラートを食べて、雨が晴れて、市場を歩いて、歌をうたって、その子は詩的でスノッブな恋をしている、スパークリ…

形而上学的・夜

夜の公園でブランコを揺すりながら、遠くにバスを何本も見送って、帰りそびれた鞄のなかで無塩バターが溶けていく。適当なお酒を買い、適当に煙草をのんで、適当にブランコを漕ぐ。夜に放り投げるイメージ。汚れた靴、ときどき星が見える。地面と空を行き来…

貝の火

春の破壊光線。相対的に地面の上に置かれる踵。風は鋭いのに体温は微睡んで、海から来た身体と出会う。靴の修理をしたい。新生活はどう?服を買いたい。仕事辞めて海外行きたいんだよねー。何年後かのはなしをしながら、ごはんを食べる。こいつは自分の性に…